左がAdriek van Nieuwenhuijzen (Head of industry)
◆IDFAとは?
IDFA(International Documentary Film Festival Amsterdam)は、世界最大規模の国際ドキュメンタリー映画祭。IDFAの特徴は、単なる上映イベントではなく、国際共同制作、資金調達、販売・配給、教育まで含めた総合的なプラットフォームとして機能している点だ。2025年はその傾向をさらに強めフェスティバルとインダストリーイベントを一体的に発展させた構造となっている。
◇ 会期 2025 年 11 月 13 日~23 日(うち 11/13~19 に 参加)
◇ 会場 アムステルダム市内
【インダストリー】 International Theater Amsterdam, De Balie 他
【上映】 Tuschinski, Pathe City, Eye Filmmuseum など 15 会場
◆上映部門
上映では、国際コンペティション、Envision Competition、Luminous、Retrospective、Best of Fests、Mastersなどちがうジャンルで編成された。上映本数は76カ国から約250本、アムステルダム市内の映画館・フェス会場など40を超えるスクリーンが使用された。特に2025年は「未来のアーカイブ」、「移動と移民」、「ポストAI時代の記録映像」など、グローバルな課題に焦点を当てたキュレーションが目立った。また、アジア、中東、アフリカからの初参加監督や新しい語り手の台頭も特徴的だった。
◆インダストリー部門
この部門の中核はForumと呼ばれる企画プレゼンだ。ピッチ部門はIDFA Forumと呼ばれ、初期段階の企画はProducer’s Connection Projects、国際共同制作が成立している企画はPitch Projects、編集後期の企画はRough Cut Projectsと分類された。完成作品はDocs for Salesという別の場所が提供された。
今年の方向性についてインダストリー部門のトップを長く務めるAdriek van Nieuwenhuijzen氏(写真左)は下記のように表明している。
「第38回IDFAフォーラムは、ドキュメンタリー作品の世界に扉を開き、つながり、刺激を与え、新しい学際的プロジェクトを探求する場である。資金調達が不安定化し、あらゆる形式が重要性を増す中、フォーラムはハイブリッド形式を採用し、柔軟性とコミュニティのニーズへの適合を目指す。
大規模な地政学的対立や気候危機など、時代が求める緊急性に応える作品が今年のセレクションに含まれる。多数の応募から選ばれた60企画のうち、21企画はAI、イマーシブ、インタラクティブ作品であり、IDFAフォーラムの未来像とジャンルの多様性を体現している。
人間と自然環境の関係、土地をめぐる争い、戦争などが主要テーマで、世界の最も脆弱な地域で制作された作品は、緊急事態下での映画制作の必然性を示す。フォーラムは、型破りな体験と独自の芸術的冒険を持つ、大胆で芸術性の高い作品を重視する。
公共放送は、非商業的ジャーナリズムや質の高いコンテンツ提供において極めて重要である。本フォーラムは、表現の自由が試される時代の映画制作者の声を受け止め、協働と創造的な刺激を提供し、作品の次の段階を後押しする舞台となる。」
かつてのFromでは半数以上の企画で、その国の公共放送局のプロデューサーが制作者と一緒にプレゼンしていた。制作資金の多くをその放送局が拠出し、放送局のプロデューサーとインデペンデント制作者が二人三脚で制作を進めていた事の表れだった。しかし今回、メインのピッチで放送局プロデューサーが壇上に上がったのはオランダVRPOのBarbara Truyen氏とフィンランドYLEのErkko Lyytinen氏だけだった。しかし上記のAdriek氏は「放送局は重要だ」と言ってくれているし、それは事実なのに制作者は放送局に向いてくれていない。フェスティバルや上映のため長尺版だけを作り、TV版(52分版)を作らないケースが多くなっている。
今年のForumで最も大きく変わったのは、そのフォーマット。プレゼン後のQ and Aタイムが無くなった。これまでの国際標準は「プレゼン7分・Q and A8分」だった。無用な質問をするデシジョンメーカーがいたこと(乗るつもりがないのに、ヘンな質問ばかりする)、英語ネイティブでない制作者にとってQ and Aが大きなストレスだったことなどが理由とのことだ。
Centrala Pitch(2018年まで)
大きな会場の中心にテーブル(2019 )
◆Forumの変遷
以前はセントラルピッチと呼ばれ、多くのデシジョンメーカーが提案者を囲む形で行われていた(写真下左)。ひとつの放送局やファンドから一人が座るという暗黙のルールがあり(ARTEは複数人が座っていましたが)、ヨーロッパの小国の放送局デシジョンメーカーは、遠慮がちに「空いていたら座る」という形だった。NHKとNHKエンタープライズのプロデューサーは話し合って、順番に席っていた。
以前のフォーマットでは多くのデシジョンメーカーに対して、一度に企画プレゼンを行えるというメリットがあったが、「ピッチの場で盛り上がっても、デシジョンメーカーはその後、全然連絡が取れなくなる」と不評。デシジョンメーカーが「我ここにあり」と見栄を張る(?)ようになってしまい、ピッチがイベント化、ショー化し、実効性が薄いとの批判を受けた。またベテランのデシジョンメーカーが次々と引退し、新しく参加したデシジョンメーカーの発言が予定調和的でショーとしても成立しなくなり大勢のデシジョンメーカーが勢揃いする形のセントラルピッチは廃止された。
コロナ直前には会場の真ん中の丸テープルを置き、その周りに指名されたデシジョンメーカーが座るという形に変わった。(写真上右)7分でプレゼン、8分間は質疑応答というピッチ方法は同じだった。
2023年のForum Pitch
2025年
2023年にはモデレーターとデシジョンメーカー4人が壇上のテーブルに座り、制作者が4人に向かって提案するという形となった。基本的には事前の聞き取りで、その企画に興味のあるデシジョンメーカーが選ばれていた。しかし、企画によっては「どうしてこの企画に私が座るの?」と戸惑うデシジョンメーカーもいた。部屋の周りには観覧者向けの椅子があり、満席で250人くらい入れたが100%埋まることは無かった。
2025年には壇上からデシジョンメーカーの姿が消え、Q and Aも無くなった。Forumの一部門であるProducer’s Connection Pitchでは壇上のソファにモデレーターと制作者だけが座り、リラックスした中で会話形式でピッチが進んだ。